公認心理師 過去問
第9回(2026年)
問62 (事例分析 問4)
問題文
20歳の男性A、大学2年生。母親Bと精神科クリニックを受診した。Aによると、約1年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになった。殴ったりはしないと分かっていても、不安で仕方がなく、気を紛らわせるため、つい爪をかんでしまう。また、3か月ほど前、ホームで電車を待っていると、目の前の人を線路に突き落としそうな気がして、強い不安に襲われた。その日以来、電車に乗る際は、Bに同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっており、通学にも大きな支障が出ているという。
Aの状況から考えられる病態を改善する効果が認められている技法として、最も適切なものを1つ選べ。
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問題
公認心理師試験 第9回(2026年) 問62(事例分析 問4) (訂正依頼・報告はこちら)
20歳の男性A、大学2年生。母親Bと精神科クリニックを受診した。Aによると、約1年前から、講義中に「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」という考えが繰り返し浮かぶようになった。殴ったりはしないと分かっていても、不安で仕方がなく、気を紛らわせるため、つい爪をかんでしまう。また、3か月ほど前、ホームで電車を待っていると、目の前の人を線路に突き落としそうな気がして、強い不安に襲われた。その日以来、電車に乗る際は、Bに同行を求め、「僕は何もしないよね」と何度も確認するようになっており、通学にも大きな支障が出ているという。
Aの状況から考えられる病態を改善する効果が認められている技法として、最も適切なものを1つ選べ。
-
認知再構成法
-
曝露反応妨害法
-
習慣逆転療法〈HRT〉
-
持続エクスポージャー法
-
眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉
この過去問の解説 (3件)
01
Aは自分で不合理だとわかっていても「前の座席の学生の頭を殴ってしまうのではないか」、「目の前の人を線路に突き落としてしまうのではないか」という考えてしまい、不安が高まっています。その不安に対して、母親Bに何度も確認行動をしています。
このことから、強迫症の可能性が疑われます。
不正解です。
認知再構成法は、不適応的な認知を修正し、より適応的な考え方や行動を身につけるための認知行動療法の技法の1つです。
本事例でも用いられる可能性はありますが、強迫症状に対しては、曝露反応妨害法の方が適しています。
正解です。
暴露反応妨害法は不安に感じる状況にあえて挑戦(暴露)し、確認行動をせずに過ごし、自然に不安が低下することを学習する治療法です。
そのため、今回の事例に最も適しています。
不正解です。
習慣逆転療法〈HRT〉はやめたくてもやめられない習慣や行動(抜毛症やチック症など)を改善するための治療法です。
不正解です。
持続エクスポージャー法はPTSDに対する治療法です。
安全な環境でトラウマ記憶を繰り返し想起し体験することで恐怖反応や回避行動の軽減を図ります。
不正解です。
眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉はPTSDに対する治療法です。
トラウマ記憶を治療者の指示に合わせて眼球を左右に動かしながらその記憶による苦痛の軽減を図ります。
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02
この問題で覚えておくポイントは以下の通りです。
心理療法の理論と実際の臨床場面での適合ができるか問われています。
では、問題を見てみましょう。
間違いです。
自動的に浮かぶ考えを適切に切り替えることを目的とした心理療法です。本問題においては、強迫観念からくる不安の解消をするために生じる様々な行動を是正する必要があるため、この心理療法単独では効果が薄いことが理由です。
正解です。
国際的には第一選択と言われています。強迫観念からくる不安を断ち切るための治療です。
間違いです。
本人がやめたいと願うのに繰り返してしまう行動を減らすための治療です。
間違いです。
PTSDの治療の第一選択です。トラウマなどに安全な環境で向き合うことで恐怖の反応を消していくための治療です。
間違いです。
PTSDに対する治療で用います。トラウマなどを思い出しながら眼球運動を実際に行うことで、苦痛と向き合うことが楽になっていくとされています。
類似した心理療法があり、単体では効果が薄いことから正答とみなさないという考え方で答えを導くことが必要です。心理療法の内容と効果があるとされている疾患はセットで覚えておくようにしましょう。
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03
加害恐怖・強迫観念・確認行為・回避行動を呈する20歳男性の病態(強迫症)に対して効果が認められている技法を問う事例問題です。
強迫症の中核的治療技法の理解が求められています。
(分野:心理に関する支援)
正解は「曝露反応妨害法」です。
認知の歪みを同定し、より現実的・適応的な思考に修正する技法で、うつ病・社交不安症等に広く用いられます。
強迫症にも一部適用されますが、強迫症の中核メカニズムである「強迫行為による不安回避の悪循環」を直接標的とする「曝露反応妨害法」と比べると効果のエビデンスは限定的です。
強迫症に対する認知行動療法の第一選択技法です。
不安を引き起こす刺激に段階的に曝露しながら(曝露)、通常行う強迫行為を意図的に行わない(反応妨害)ことで、強迫行為なしでも不安が自然に低減することを体験的に学習させます。
本事例では「前の座席の学生を殴るかもしれない」という加害恐怖(強迫観念)に対して爪かみ・確認行為という強迫行為が維持されており、曝露反応妨害法の適応と明確に合致します。強迫症の国際的治療ガイドラインでも曝露反応妨害法は第一選択として推奨されています。
チック症・抜毛症・皮膚むしり症などの反復性行動障害に対する技法で、問題行動の前兆への気づきと競合行動の実施を組み合わせます。本事例の爪かみは強迫行為の一部であり、チック・習慣性行動の治療技法である習慣逆転療法は主適応ではありません。
PTSDに特化した技法で、トラウマ記憶への想像的曝露と実生活での段階的曝露を組み合わせます。本事例にはトラウマ体験の記述がなく、強迫症への適応ではありません。
PTSDへの効果が実証された技法で、トラウマ記憶を想起しながら眼球運動等の両側性刺激を行います。PTSDへの適応であり強迫症の治療技法ではありません。
本問のポイントは「加害恐怖(強迫観念)+確認行為・回避(強迫行為)=強迫症→曝露反応妨害法」という対応を迅速に判断できるかです。「持続エクスポージャー法」との混同に注意が必要で、曝露反応妨害法は強迫症、持続エクスポージャーはPTSDという適応の違いを明確に区別することが重要です。
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